第五章

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10月13日、土曜日。 生まれてから16年の月日が経たらしい。 あれ、高校入学したのってつい最近だったはずだが、もうそんな過ぎていたとは。 起床したての頭でぼんやりとカレンダーを眺めたが、やはり生誕日なのは事実らしい。 今日、七星くんがここに来る。 あのときは3ヶ月も経ってしまったらすっかり忘れてしまってると思っていたが、案外ずっと記憶に残っていた。 毎日花を見ていたら忘れることができなかった、というのが妥当だろう。 七星くんが来なくなってから花に興味を持つようになった。 路傍に咲いている花を何気に見つめたり、綺麗だと思うようになったり、あの人の影響を受けたんだと思う。 トントン、とドアをノックされ考えてたことから現実に引っ張り出され。 「何ぼーっとしてんの」 急に部屋に入ってきて、その言葉はないでしょ。 直後、まぁ地面に三角座りしてるだけだし無理もないかと納得した。 「ほら、ご飯食べないと戦はできないのよ」 普段なら流してしまいそうな会話が、今は気を緩めるには必要だと身にしみた。 「夏輝、もう10分ないよ」 もたもたしてる私を急かすように、壁掛け時計がカチッと音を立てて針を動かした。 「そんなにおめかししなくても、普段通りの夏輝でいいと思う」 「なんでよ、だって久しぶりなんだから...」 「いつも会える人ならどんな服装するの?」 変に気取らなくていい。そのままの夏輝があなたらしいから。 そう言ってくれたお母さんの意見を尊重して、最後に会ったときと同じように制服にした。前と違うのはカーディガンを羽織っていることだ。
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