1人が本棚に入れています
本棚に追加
第一章
『明日から七月にかけて梅雨時となるでしょう』
テレビから聞こえてくるもさぁ話す気象予報士の声。
「お母さーん!明日から梅雨だってー」
台所で夕食の準備をしているお母さんに叫ぶ。シチューのクリーミーな香りがリビングまで充満している。
「ほんとー?」
「うんー!」
やったやった、とお茶目にジャンプしている。
「お母さん、ほんと雨好きだね」
「りんごがよく育ってくれるからね」
私が幼い頃はまだ、お婆ちゃんがりんごを一所懸命に育ててたが足を弱くしてからは、お母さんがそれを受け継いだらしい。
ほらできたわよ、と出されたシチューはいつもより多い。
「ねぇー私も農家になりたいー」
「でも夏輝、楽しんでできるかしら?」
挑戦状を叩きつけるようににやりと笑う。
「でーきーるー」
「そんなこと言ってー、目の前のご飯に気取られてるじゃない」
「目の前に置いたお母さんが悪い」
人参を口に放り込む。んー、シチューは美味しいけどその中の人参はあんまりなんだよねぇ。
「明日は張り切っちゃうわ」
いつも以上に目がキラキラと光っている。
最初のコメントを投稿しよう!