第三章

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これらの花を毎年見つけてはこうして写真を収めるが、花名が未だ分からないらしい。 『僕が一番気に入ってるのはこれ』 画面にうつるのは、紺色に紫を混ぜたような色をした、アサガオのような花。 『綺麗ですね』 『うん...でもこれどうやって検索しようかな...』 『図鑑で探すのは嫌なんですか?』 生意気に聞いてみる。私は絶対に嫌だけど、という思いを込めて。 『あー...まあ頑張ろっかなぁ...』 急にそんな会話をしたことを思い出した。花を見ていると七星くんが浮かんでくるのは仕方ない。 今ごろ図書館で図鑑とにらめっこをしているのだろうか。 どんな花が咲いてるのか気にしたことない故、名称や外観でさえも私にはわからない。 「久しぶりー、夏輝ちゃーん」 声のする方を向く。クセっけある黒髪。すぐに倒れそうな細い体。朗らかな笑顔でひらひらと手を振るのは七星くんだ。 今日もいつもの如くレインコートを着ていることもなく、朝から降っているのに何故かおりたたみ傘だ。また髪を濡らす気なのか。それともここに寄っただけですぐ帰るのか。 「今日もお疲れ様」 「まだ始まったばかりですよ!」 「頑張るねー」 いやあ、花の名前を知ろうと調べている君の方が十分頑張ってると思うのだよ。
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