第三章

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この辺は田んぼや畑が密集している。そのせいか人気がなく、歩いてるのは私たちのみ。稀に、犬の散歩をしているおじいちゃん、おばあちゃんを見かけるんだが、今日はまだ誰とも出会っていない。 「この本借りたときはどんな風に...」 「スマホの地図見ながらだよ」 今日は置いてきちゃったんだよね、とさらっと言う。 「えぇ、いやそんなわからない所に行くのに置いていくなんて...」 「だから農園に行って夏輝ちゃんに訊きにきたじゃん」 いつものように目を細めたくなるような、眩しい笑顔を向けられる。それに何も言い返せないのは、これで何回目だろうか。 「ごめん、迷惑だったよね」 「大丈夫ですよ」 普段は面倒だからこんなことしたくないのに、七星くんに頼られるのは不思議と嫌じゃなかった。 「あ、あれ」 白いペンキが所々剥げていて、全体的に錆びた信号機の前で立ち止まる。 これを右折か、左折か。それとも直進か。 「どうしたの」 「...これどの道を行けばいいんですかね...」 「うーん...」 「あ、ごめんなさい...」 生まれも育ちもここなのに、未だここの道の作りを分かってないなんて情けないナビゲーターだ。 「右行きます?」 特別な理由はない。
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