1人が本棚に入れています
本棚に追加
「...僕的に右より、左に行く方が建物ありそうだけど」
後ろから来た黒い乗用車が、ウインカーを立て左へ曲がる。
「...そうしましょう」
しばらく歩くと、堂々と構えている図書館が現れた。
これでもかってほどに大きい文字で中央図書館と記してある。
七星くんの意見に従っていて正解だった。もし右に行っていたら今ごろ、何もない道路でうろうろさまよっていたことだろう。
「ありがとね」
「いや、私は迷いかけたので何も役に立ってないです...」
「いいのいいの」
そんなやりとりを過ぎ行く人がちらりと見る。
「あ、私..その中に...」
人に気を取られ言葉が淀んだ。
「長くなるけどいい?」
これだけで察してくれたとは。読み取りの速さに感心しながら頷く。
館内では迷わずに進んでいく七星くんのあとを、そそくさとついていく。
本が密集した場所に滅多に行かないから、無駄に緊張してしまう。
「なんかめっちゃ静かですよね」
足音一つも許さないような緊迫した空気。
「こんなもんだよ」
そう言って気楽そうに笑う。
花図鑑のために、地元の図書館を巡っているんだろうか。
「探してる本があれば探しましょうか?」
最初のコメントを投稿しよう!