第三章

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「ううん、大丈夫。ここにあるはずだから」 七星くんが足を止めたのは産業と書かれた場所。 将来、水産業にでもなりたいのかなぁと思っていたのだが、どうやら植物系の本はこの部類らしい。ここの図書館の括り方にいまいちピンとこない。 「夏輝ちゃん」 「なんでしょう」 「僕ら同い年だし、タメ語でいいんじゃないかな」 唐突すぎて返答できず、ただ七星くんを見た。手に握られているのは『上司へのマナー・敬語』。 それで思い出したのだと納得する。 「なんでここにあるんですか」 七星くんが片方の頬を膨らませた。 「あ、えと...なんでかな」 僕が直すしかないなぁ、といつもより弾んだ声でその本を持っていった。 「誕生花知りたいんだよね」 帰り道、ぽつぽつと話す。 「あれ?でも夏の花は?」 「それはもう調べ終わったよ」 流石だなぁと感心していると「デルフィニウム」と聞きなれない単語が聞こえた。 「うん?」 「この前僕が気に入ってると言った花の名前だよ」 あの、青に近い紫のような綺麗な花か。画面に映っていた花の外観が頭に思い浮かぶ。 「最初知ったとき元素名かと思ったんだよ」 「元素名?」
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