第三章

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「おぉ私が気になったのと同じタイミングなんて」 「僕からしたら夏輝ちゃんが気になるのが驚きだよ」 「え、なんでよ」 「花に興味ないと思ってたから」 あはは、と快活に笑う。 まあ確かに私が花のこと気になるなんて、我ながら意外だと思う。 「夏輝ちゃん誕生日いつ?」 七星くんが足を止めた。前を向くと信号機が赤を示している。 「10月13」 「ありがと!帰ったら調べよーっと」 「自分自身の探しなよ」 「探すけど、夏輝ちゃんも気になって」 気になるって、そんな簡単に言えちゃうのかな。私はなかなか言えないけど。 考えると恥ずかしくなって、その言葉から逃げるように会話を繋いだ。 「七星くんこそ誕生日いつなの」 「4月9日だよ」 「七星くんって春らしい人だもんね」 「なんだそれ」 桜がひらひら舞うように明るく笑った。 * りんごの世話をしない週の休日は何もすることがなく、手持ち無沙汰だ。 集中力が上がるといわれている雨の効果は、テスト対策もろくにしない私には無効である。 床に大の字になる。湿気溢れるジメジメとした空気のせいで眠気さえも襲ってこない。涼しければ熟睡できるのに。
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