第四章

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「なーつきちゃん」 「...あ、ごめん。上の空だったよ」 そう言って何もなかったように微笑む。 「そっか。どこかしんどいのかと思ったよ」 そんな優しい言葉に嘘ついたのが申し訳くなる。その償いというわけでもないが、そろそろきくとしよう。 「七星くん」 「んー?」 「..…梅雨が明けたらどうするの?」 私も女の人特有の回りくどい質問の仕方をしてしまった。 「えー、うーん」 手を顎に当ててまで、本気で悩まなくてもいいのに。七星くんらしいなぁ、と微笑ましい。 「とりあえず傘を一本に減らす」 「へ?」 ...この人の回答が度々理解できないことが多い。素っ頓狂で間抜けな声を出してしまったじゃないか。 「僕、今の時期2、3本用意してるから梅雨が終わったら1本にするんだよね」 うーむ。そういうのが聞きたいんじゃないんだけどなぁ。 「あれ?また上の空?」 「いや、今のは聞いてた...」 「じゃあ何で無視したんだよー」 「七星くん、天然だなぁって 」 質問の主旨がずれている私にも責任があると思うけれど、七星くんの頭の回路がどうなっているのか知りたいほどだ。 「夏輝ちゃんは、雨が梅雨が明けたらどうする?」     
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