第四章

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どうせ辞書で秘密を引いたところで隠すことって書いてるはずだ。 「同じだよ」 「全然同じじゃないよ。秘密ってのは何も言わないことだと思う」 「そんなの主観でしょ」 エネルギーを使うと余計全身が火照ってくる。 「どうかな。まあ僕はここにいられないけど、いずれ帰ってくる」 「いつからいなくなるの」 「うーん、明日かな?」 あっさりと明日なんて告げられた側はどうしていいか混乱してしまうよ。 「七星くんって春風みたいだね」 「何それ、それこそすっごい主観だよ」 全身を包み込んだ暖かい風が一瞬で過ぎていくように、さり気なく現れて気持ちをぽかぽかにしたあとは、跡形も無く去っていくから。 というバレてしまったら恥ずかしい理由はとてもじゃないけど、言えるはずがない。 「ほら、最近暑いでしょ」 いきなり突拍子なことを言い出して、何のつもりなのか知らないが取り敢えず頷いた。 「雨降らないよね」 「うん」 「だから僕は無理なんだ」 困惑させるような発言されるのも、もう慣れつつある。 しかし、意味を理解するにはかなりの時間が必要となるだろう。 「どういう意味なの」 「太陽に溶かされちゃう前に帰らないと」     
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