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新しい学校にもやっと慣れてきた5月中旬。
「えーっ、ミナ告白されたの?!」
「うん・・・」自分の席に着き、ひとりのんびりと読書に没頭する私の耳に最近「誰それの恋バナ」が届く。
(まぁ、私には関係ないから。好きな人っていないし・・・)
なんとなくケイくんの笑顔が浮かぶが、いまどこでどうしてるのかは、わからない。田舎と言えど、住民がかなりいる地域なのだから・・・
「・・・ったく、おせーって」
「わりーわりー」私の机の横を喋りながら通る田中くんと石川くん。
ガタンッ・・・と石川くんが持っていた鞄が机にあたった。
「・・・って。あ、わりーな」軽く頭を下げながらもズレた机を直し、二人で教室を出ていった。
彼らが戻ってきたのは、5時限目の予告チャイムがなってからだった。
(最近、新川くんと仲がよくなったんだ)
新川くんと石川くんは、小学生からの友達とかで家も近所で同じサッカー部に所属している。
野球部や水泳部もこの高校にはあるけど、ことサッカー部は、人気が高い。つまり、モテる!
どれ位モテるかと言うと・・・
「「石川せんぱーーーいっ!!」」
「・・・・・・。」
「あっ!いま手、振ってくれた!」
「・・・・・・。」
グランドでサッカー部の練習を眺めながら、帰ろうとすると後輩の女の子から黄色い叫び声が聞こえてくる。
そんな声を聞きながら、私はサッカー部が練習している横の通路を歩く。
「───っ!」
「危な・・・」
「え?」不意に自分に向けて呼ばれた気がして、振り向いた瞬間・・・
ボンッ・・・カシャッ・・・
サッカーボールが、左耳スレスレのとこにあたり、眼鏡を落とした。
「いっや、わりーわりー。避けると思ったから・・・」汗ばんだ顔で、私の髪をグシャグシャにした石川くん。
そばにいた女の子からボールを受け取ると、慌ててグランドへと戻っていった。
「・・・眼鏡・・・」彼に踏まれて、眼鏡の原型を失った私の眼鏡・・・
「最悪・・・・・・」私にとって彼は、苦手な部類に入っていった・・・
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