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きっと僕らは近いうちに壊されてしまうかも知れない。
子供たちを見守る役目だった僕らは、そう感じていた。
僕は小さな学校。廃校となったボロボロの学校。
もうじき、僕らの長い夏休みは終わり、永遠の眠りにつくかも知れない。
ちょっとだけ涙が落ちた。
今は夏休みの時季。僕らの最後の夏の夏休みかも知れない。
二宮金次郎の像もプールも桜の木も覚悟している。
寂しいけれど、悔いはない。
「わぁ。ボロボロだねぇ」
ある日、校庭にそんな声が響いた。
「ここがお母さんの母校なのよ」
子供の手を引いた女性。
その顔は覚えている。僕が昔見送った女の子。忘れるものか。
「可愛らしい学校だね」
手を引かれた女の子がそう言ってくれた。
そうだよ。僕は平屋の教室は三つしかない小さな学校なんだ。
ちょっとだけ嬉しかった。
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