第1章 密かな出会い

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はぁ、はぁ、はぁ……。 ダメだ、呼吸が荒くなってる。落ち着かなきゃ。 スタジオ前のイスに座り、台本を丸めながらアキは思った。 オレ、佐上アキ(さがみあき)は声優志望の20歳。 大学の声優タレント科で学びながらの生活だ。 そして今日、オレにとって初めてのオーディションが行われる。 突然だけど、オレは163cmと身長が低いんだ。 生まれつき明るめの茶髪に、黒色の大きな瞳。 くせ毛のためところどころ外側にはねている。 前髪がはねると困るから、いつもヘアピンで留めてるんだよ。 今日は緑とピンクのをクロスさせてる。 周りの人から「かわいい」と言われ続けてきたオレは、童顔でそこそこ顔が整っているらしい。 そんなこともあり、書類審査は大丈夫だったのだが……。今日は実際に聞いてもらうスタジオオーディションだ。 2年間大学で学び、練習を積んできたからといって緊張しない訳がない。 絶賛緊張中のオレは落ち着くために必死である。 「えっえっと、手のひらに人って書いて飲めばいいんだっけ。あれ、何回? 3回? 5回?」 「ふふっ、3回だよ。君、緊張してるね。大丈夫だから落ち着いて」 彼は、オレの肩を優しくたたいて通り過ぎた。 えっ、誰だ? いやいや、っていうかこの声は…… 「桜木……カイトさん」
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