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はぁ、はぁ、はぁ……。
ダメだ、呼吸が荒くなってる。落ち着かなきゃ。
スタジオ前のイスに座り、台本を丸めながらアキは思った。
オレ、佐上アキ(さがみあき)は声優志望の20歳。
大学の声優タレント科で学びながらの生活だ。
そして今日、オレにとって初めてのオーディションが行われる。
突然だけど、オレは163cmと身長が低いんだ。
生まれつき明るめの茶髪に、黒色の大きな瞳。
くせ毛のためところどころ外側にはねている。
前髪がはねると困るから、いつもヘアピンで留めてるんだよ。
今日は緑とピンクのをクロスさせてる。
周りの人から「かわいい」と言われ続けてきたオレは、童顔でそこそこ顔が整っているらしい。
そんなこともあり、書類審査は大丈夫だったのだが……。今日は実際に聞いてもらうスタジオオーディションだ。
2年間大学で学び、練習を積んできたからといって緊張しない訳がない。
絶賛緊張中のオレは落ち着くために必死である。
「えっえっと、手のひらに人って書いて飲めばいいんだっけ。あれ、何回? 3回? 5回?」
「ふふっ、3回だよ。君、緊張してるね。大丈夫だから落ち着いて」
彼は、オレの肩を優しくたたいて通り過ぎた。
えっ、誰だ? いやいや、っていうかこの声は……
「桜木……カイトさん」
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