第2章 彼との再会

2/6
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
オーディションは終わった。 正直、あっという間に過ぎてよく憶えていない。 だから、達成感や嬉しさは沸かない。 かといって、後悔や絶望もない。 何しろ憶えていないからだ。こればかりはどうしようもない。 「はぁ、次のオーディションは記憶を保っておこう」 という程度の反省しかできない。 実は自分、何回か声あての経験はあるのだ。 友人Aや店員Bなど、いわゆるモブキャラというものではあるが……。 モブキャラにはオーディションがない。 メインキャラのオーディションで落ちた人の中から選ぶか、キャスティング協力になっている事務所に人を出してもらうのが普通だ。 つまり、融通が聞きやすいのである。 2つ3つのセリフしかないため、簡単に言ってしまうと適当なのだ。 そしてオレの通っている大学の講師は現役声優である。 講師が主要キャストに選ばれたため、そのよしみでたまたま目をかけてもらっていたオレが推薦されたのだ。 あえてもう一度言う。モブキャラではあるが……。 そんな訳で、今回が初めて挑戦した大きな役であった。 オレがオーディションを受けたのは、『僕がタイムスリップしたらジュラ紀に着きました』という深夜アニメの主人公。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!