第二話 階段

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 独身で一人暮らしをしている新田を心配して知人の父が食事に呼んでくれるので昼と晩飯は知人の実家で食べる事が多い、脱サラして出費を抑えたい新田にとって有り難い事である。もちろんその御礼に畑仕事や力仕事などを手伝っている。大手企業の営業職だったので人付き合いは慣れたもので田舎固有の付き合いも直ぐに覚えて旨くやっていた。 「ご馳走様でしたぁ」  食事だけでなくお酒も少し頂いて礼を言って知人の実家を出たのが夜の8時前だ。  ほろ酔い気分で100メートルほど離れた自宅へと戻っていく、 「今度ビールでも買って持って行こう、食事はともかく只酒ばかりじゃ悪いからな」  外灯が無く午後8時で既に暗い夜道を歩いて家に着く、鍵を開けて入ると空気が悪く感じた。 「どんよりしてるなぁ…… 」  階段下のトイレで小便を済ませて2階へと上がる。一軒家はハッキリ言って一人暮らしでは持て余す。自室として使っている2階の8畳間だけで充分だ。 「うおぅ! 」  階段を上がっていた新田がよろけて手摺りに掴まる。 「あぶっ、危ねぇ~~ 」  危うく落ちそうになって必死で体勢を整えた。 「またかよ……酔うほど飲んでないんだけどなぁ」  住み始めて2ヶ月が経つ、階段で転びそうになるのは5回目だ。  何かあるのかと階段を繁々と観察するが何も変わった所は無い、暫く彼方此方を見ていたとき足に痛みを感じた。 「痛てて…… 」  確認するように見ると右足の親指の爪が赤黒くなっていた。 「内出血してるな」     
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