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「よろしくお願いします。自分も手伝いますんで何でも言ってください」
雨漏りの様子を見るために大工が家に上がり込む、新田の後ろで階段を上っていた老大工がふと足を止めた。
「いけねぇよ、此奴はいけねぇ」
何がいけないのかと前を上がっていた新田が振り返ると老大工がじっと階段を見つめていた。
「適当な仕事しやがって、何処の大工だ」
不機嫌な顔で老大工がじっと見ているのは階段の11段目だ。
いつも転びそうになっている場所だと気付いた新田が思いきって訊いてみた。
「何がいけないんですか? 」
「此処がいけねぇ」
老大工が11段目の板をポンッと叩いた。
「何か変な事が起きちゃいないか? 」
老大工に訊かれて新田が直ぐに返事を返す。
「あります。そこら辺で転びそうになるんですよ」
「転ぶか、そうだろうなぁ」
納得するように頷くと老大工が新田を見つめて口を開いた。
「逆になってる。上と下の板と比べてみな」
老大工が上の12段目と下の10段目の板をポンポンと叩いた。
「逆ですか? 」
上下の板と11段目の板を比べるように見ていた新田が声を上げる。
「ほんとだ。木目の模様が違う」
「だろ、逆になってるんだ」
気付いた新田に老大工が説明してくれた。
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