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階段に使われている板は全て一本の木から取られた物だ。足を取られる11段目の板だけ左右逆だという、大工によれば左が木の上側で右が根元になるように板が置かれているが11段目だけ逆に置かれているという、改めて見てみると板の木目が11段目だけ揃っていない。
納得した様子の新田を見て老大工が続ける。
「木目を揃えてやらにゃ木がかわいそうだ。木と目を並べて書いて相(そう)と言う、姿、有様、外見、状態という意味だ。吉凶とも関係している。悪い相だとか良い相だとか言うだろう、だからきちんと揃えないといけない、柱もそうだ。逆さ柱は良くない、それと同じで板も綺麗に並べてやらないとダメだ」
「それで躓いてたのか……直せるんですか? 」
不安気に訊く新田の前で老大工がニッと好々爺の顔で笑った。
「任せろ、直してやるよ家がかわいそうだからな」
「よろしくお願いします」
「それより雨漏りが先だ。階段は雨が降ってても出来るからな」
笑顔の老大工を連れて2階へと上がる。
「なるほどな、これなら直ぐだ。今日中に直せるぞ」
天井に出来た雨漏りの染みを見て屋根の具合が分かったのだろう、老大工は直ぐに仕事に取り掛かってくれた。
雨漏りの修理が終った後で階段も直して貰った。腕が良いと評判なだけはある。老大工でなければ階段の異変に気付いていないだろう、それ以降、階段で躓くことは無くなった。
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