第三話 達磨

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第三話 達磨

 骨董品を集めるのが趣味という高坂さんが体験した話しだ。  高坂は裕福でも無く普通の会社員である。なので値段の高いものはそうやたらに手が出せない、従って買うものと言えば胡散臭い安いものばかりになる。下手の横好きと言う奴だ。  1年ほど前の休日、偶に立ち寄る古道具屋で年代物らしき達磨を見つける。片目が塗られていない達磨だ。願掛け達磨とも言われる祈願達磨である。飾りに使う達磨は両目を初めから描いてある。願掛けに使う達磨は目が描かれていなくて願い事をしながら左目だけを入れる。願い事が叶えば右目を入れて礼を言う、これが一般的な願掛けの方法だ。  店に置いてあるのは右目しか描いていない、つまり願いが叶わなかった達磨という事だ。店主曰く、飾り物の達磨と違い祈願達磨など滅多に出ないという、相当古い物らしくもし名のある人の家にあった達磨だと分かれば何百万と付いてもおかしくないらしい、それが1万円だ。もし只の達磨でもこれ程古いのは1万円の価値はある。 「見る人が見れば価値が分かるんですがねぇ…… 」  店主にそんな事を言われたら欲しくならないわけがない、高坂はその場で支払って家に持ち帰った。     
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