17人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
そう言って、窓から下の階に飛び降りる。
着地しても音が全く響かない。
「なら、こう反論しようか」
得意になった笑みを絶やさず、泥棒は続ける。
「君はなぜ両親が留守になると、一人真夜中にピアノを弾くのか」
高らかに言って、泥棒は彼女の方に歩いていく。
「まるで、誰かを誘うよう。誰かにこの世界を壊してほしいと願っているかのよう。違うか?」
彼女は何も言えず、ただ怯えて身をすくませる。泥棒は続ける。
「両親は君をエリートとして育て上げようと必死だ。少しでも悪い成績であれば、幻滅する目で見られ、無能の烙印を押された気持ちにさせられる。誰か優秀な子たちと常に比較され、落ち着く間も与えられない。息が詰まりそうだ! 逃げ出したい! 誰かこの世界を壊してと願っている! 無力な自分はただ一人真夜中にピアノを弾くことしかできない! そうしていれば、誰か救ってくれるのではないかと夢想している! そうだろう!?」
矢継ぎ早に言われることが、彼女の心に刺さる。
「ささやかで、無駄にも等しい抵抗。君のように優し過ぎて自分を偽って周りの期待に応えようと身を削る奴は、大抵よくわからない方法で抵抗を示す。誰がわかるだろうか、そんなひねくれた抵抗!」
ついには、泥棒は彼女の目の前までやってきて、ただ熱弁を振るう。
最初のコメントを投稿しよう!