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「そんな無力な少女が、盗人一人に何ができようか、いや、できまい!」
そして、急に熱が冷めるかのように、泥棒はため息をつく。
「ごめん、怖がらせて。こんなんじゃ、怖くて言葉も出ないよな」
そこで、ようやく彼女も落ち着いてきた。
「そ、それでいったい私にどうしろと言うの?」
声が震える。腕を組んで、不安を表に出さないようにこらえる。
「いや、それはこっちのセリフ」
「え……」
「だから、一人になった真夜中にわざわざピアノを弾いて、誰かに何かをしてほしいと訴えていたんだろ。じゃあ、ここに来た俺は、君の願いを聞くべきだろう?」
彼女は沈黙する。泥棒のTシャツに書かれた文字をなんとはなく眺める。
「じゃあ、当ててやろう」
しびれを切らした泥棒が言う。
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