0人が本棚に入れています
本棚に追加
聖夜の星空は見えない
クリスマスに雪が降る街。地元の人々はこの街はそんな風に呼んでいるらしい。曰く、クリスマスにくらいしか雪が降らない。尤も、降ったところで積もりはしない。
今朝の天気予報では嬉しそうに「今夜は雪でしょう」だなんて、見掛けのいいお天気お姉さんが言っていた。
去年のクリスマスは雪が少し降った後にぽっかりと空いた曇天の穴から星が覗いていた。あの景色はきっと忘れることはない。そう思うくらい綺麗だった。
ふと、顔を空に向けてみる。太陽は真上にいる時間だが雲は五割というところだ。ここから雲が増えるのだろうか。分からない。
たまには雪の降らない、満天の星空のクリスマスもいいじゃないかと思う。でも、きっと、降ってしまうのだろう。
今年もまた、聖夜の星空は灰色に埋まり、白が降る。星空は見れない。
瞼みたいな雲が星空を隠していた。薄い雲が満遍なく広がって、その上に広がる空を隠している。
流れる雲は速い。一体、具体的な数値にしたらどんなに速いのだろうかと思う。普段なら適当にでも計算をして答えを出すところだろう。
河川敷に吹く冬の風は、身を裂くような寒さを運んでいて思わず身を縮ませた。
「うう……。寒い……。」
最初のコメントを投稿しよう!