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折り畳み式の携帯電話を見つめて芦立は溜息をついた。
舗装もされていない山道を彼此1時間近く走っていた。午前中に大きな契約が取れて今日の仕事はお仕舞いだ。
浮かれ気分で運転していて近道をしようと思ったのか、遊び心が湧いてきたのか、山の中の国道を走っていたときに脇道を見つけて入り込んだのだ。
「この山を越えたら直ぐに町だから真っ直ぐ通ってたこの道を行けば間違いなく町に降りれると思ったんだけどなぁ」
林業か農業に携わっている地元の人が使っている道だろうと入り込んだのだ。車が通れるほどの道だ。適当に走らせても何処かの町に着くだろうと気軽に走っていたのだが幾ら走っても山から抜け出せない。
「まだ4時だぞ、山は早いなぁ、暗くなる前に帰りたいよなぁ」
日が傾いてきて山道が薄暗くなってくる。
「引き返すにしてもそれも分からないからなぁ…… 」
完全に迷っていた。車中泊も覚悟しながら車を走らせると分かれ道の先に明かりが見えたような気がした。
「家があるのかな? 助かった道を聞こう」
今通っている山道から車一台がギリギリ通れる細い道へと入っていった。
「あっ! 店だ。蕎麦屋だ!! 」
細い道の先が少し開けていて蕎麦屋があった。民家を改造したような店構えだ。
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