第三話 山の蕎麦屋

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 芦立の蕎麦の食べ方を見ていたオヤジが機嫌良く道を教えてくれた。 「ちょっと待ってな、地図を描いてやるよ」  大学ノートを持ってくると芦立の向かいに座ってノートの切れ端にオヤジが地図を描いてくれた。 「ありがとうございます。蕎麦美味しかったです。また来ますよ」 「そうか、旨かったか」  頑固そうな少し強面のオヤジの顔が好々爺に代わった。 「今までで一番美味しかったですよ、地図ありがとうございます」  礼を言って店を出る。その手には手書きの地図と箸が入っていた袋を握り締めていた。箸袋には店の名前と電話番号が書いてある。 「道に迷ってよかったな、こんなに旨い店があるなんて……また来よう」  箸袋を大事に財布の中へと仕舞うとオヤジに描いて貰った地図を見る。 「此処が店だから…… 」  手書きの地図通りに車を走らせると15分程で町へと続く国道へ出る事が出来た。 「おぉ……助かった。これでホテルで寝れる」  最悪、車中泊を覚悟していた芦立は蕎麦屋のオヤジに感謝した。 「また来よう、あんな旨い蕎麦なら毎日でも食べれるよ」     
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