第三話 山の蕎麦屋

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 国道を走って予約していたビジネスホテルに着いたのは午後6時半だ。慣れない山道を走って疲れたのか今日纏めた契約をチェックした後でシャワーを浴びて酒を飲むとそのまま眠りについた。  1週間ほどして他の地域へ行く事になる。その前にあの山奥の蕎麦が食べたくなった。何度か行こうと思ったのだが仕事が忙しく行けなかったのだ。 「やっと行ける。ざる蕎麦に天麩羅蕎麦……山菜の天麩羅って書いてあったな絶対に旨いぞ、本当は朝から行きたかったんだが本社から電話があって……休みだってのにさ」  時刻は昼の1時を回っている。  蕎麦屋のオヤジが描いてくれた手描きの地図を助手席に広げて車を走らせる。山を降りたのとは逆に進んであの店に行こうと考えたのだ。 「売ってる地図には載ってない道だからな」  国道から舗装のされていない土が剥き出しの山道へと入っていく、 「地図に載ってないのに客が来るのかなぁ……隠れた名店って奴で知ってる人だけが来る店かもな」  地図を逆に走るが店には着かない、何処かで間違ったかとバックして幾つかあった脇道を確認するが道は間違っていない、店に電話を掛けようと財布に入れていた店の名前と電話番号が書いてある箸袋を出す。 「ダメだ。電波来てない」  山奥の地図にも載っていない山道だ。電波は通じない。     
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