第三話 山の蕎麦屋

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 何となく覚えていた道に入っていく、草ぼうぼうでとても使われている道とは思えない。 「あった! 」  見覚えのある店の屋根を見つけて芦立のテンションが上がる。 「えぇ!? なっ、何で…… 」  期待に膨らんだテンションがあっと言う間に下がった。  蕎麦屋の屋根が半分崩れ落ちている。引き戸も片方が外れて転がり、店のガラスは彼方此方で割れている。廃墟のようである。 「何で? 何が…… 」  愕然としながらも芦立は店の前に車を着けた。前に来たときは店の直ぐ前に車を止めたのだが今は店から4メートルほど離れた所に止めた。腰の辺りまである高い雑草が生い茂っていてそれ以上近付けなかったのだ。 「間違ったかな? 」  首を傾げながら芦立は車を降りた。  雑草を掻き分けるようにして店に近付く、 「間違いない、この店だ」  半分崩れ落ちた店のドアの横、看板に書かれてある名前が箸袋と同じ名前だ。 「何で? 」  店は昨日今日で潰れた様子ではない、少なくとも10年以上は経たないとこの様な廃墟にはならないだろう。 「俺は何を食ったんだ…… 」  芦立は呆然としながら店の中を覗いた。 「あっ! 大学ノートだ」  奥のテーブルの上に大学ノートが一冊置いてあった。頑固そうなオヤジが地図を描いてくれたノートだ。     
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