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「やっぱり此処で食ったんだ」
愕然としながら車に戻る。
「蕎麦通だって褒めてくれたんだオヤジさん…… 」
助手席に置いてあった地図が描かれたノートの切れ端を見つめる。
エンジンを掛けると芦立は窓を開けて車から顔を出す。
「オヤジさん、蕎麦旨かったよ、今まで食べた中で一番だったよ、道も教えてくれてありがとう」
大声で礼を言うと芦立は車を走らせた。
地図の通りに走ると迷うことなく国道へと出た。芦立はそのまま次の町へと車を走らせた。
迷った山道で見つけた蕎麦屋は幻だったのだろうか? 時間を超越して過去へと行っていたのだろうか? 蕎麦屋が健在だった頃の過去へ、それとも何か怪しいものにでも化かされたのだろうか? いずれにせよ芦立さんは出来る事ならもう一度食べてみたいと今でも思っている。あれから10年が経つがあれほど美味しい蕎麦には出会っていない。
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