第三話 滑り台

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 3ヶ月経ったある昼下がり、下井戸さんは2人の子供を連れて近くの公園へと遊びにやって来た。夕食の支度をするまでの2時間ほどを外で遊ばせるのだ。他のママ友たちとの情報交換の時間でもある。  新しい滑り台と砂場では近所の子供たちがワイワイと遊んでいる。  滑り台は金属製ではなくコンクリートで出来た山のようになっているもので転がり落ちることはあるかも知れないが飛び落ちたり出来ない構造になっている。山もなだらかで転んで滑っても擦り剥く程度で済むだろう親としては安心して遊ばせられるものである。  3歳になる次男を動物の形をした揺らして遊ぶ遊具に乗せて遊ばせながら下井戸はママ友たちと談笑していた。5歳の長男は滑り台で他の子供たちと遊んでいる。  暫くして長男が泣き出した。何があったのかと下井戸が滑り台へ見に行った。 「尚くんが叩いたぁ~~ 」  長男が泣きながら下井戸に抱き付いた。 「尚くん? 」  下井戸が遊んでいる子供たちを見回す。ママ友たちの子供はみんな知っているが尚という名前は聞いたことがない。 「誰なの? どの子に叩かれたの? 」 「向こうにいったぁ~~ 」  下井戸が訊くと長男は泣きながら公園の反対側を指差す。向こうにも出入り口があり、鉄棒が並んでいる。他に遊具は無く、夕方になると子供たちがボール遊びを始める場所だ。 「あっ! 尚くんだ」  長男が指差すが下井戸には子供の姿など見えない。     
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