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第四話 カラス
都内の飲食店に勤める藤沢秋萌(ふじさわあきめ)さんはカラスが苦手だ。
1~2羽なら我慢できるがそれ以上の群れでいるカラスを見ると大人になった今でも逃げ出すほど嫌いである。
カラスが苦手になったのには訳がある。藤沢さんが中学2年生の頃の話しだ。
都内に出てくる前は群馬県に住んでいた。田畑に囲まれた田舎ではなく家々が並ぶ普通の住宅街だ。
5月のある日、学校からの帰り道だ。大きな道路の横断歩道で友人たちと別れて1人で住宅街の道へと入っていった。
家から100メートルほど離れた場所にある大きな駐車場でカラスが集まって騒いでいた。駐車場を囲む小さなマンションや家々の屋根の上でカァカァと鳴くカラスを見て藤沢は煩いなと思いながら通り過ぎようとすると広い駐車場の奥に停めてある車の周りをカラスが歩き回っているのが見えた。
ピョンピョンと跳ねるようにして歩くカラスを見て珍しいと藤沢が足を止める。
「ニャァー、ニャァァ~~、ナァナァ~~ン」
猫の鳴き声が聞こえた。家で猫を飼っている藤沢には子猫だと直ぐに分かった。
「猫だ…… 」
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