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自慢気な里見の前で母親が血相を変えた。
「石じゃない! お墓よ、これはお墓の石よ」
母親には直ぐに分かった。御影石だ。墓石によく使う石である。
「お墓の石…… 」
母親に言われて里見も思い出した。墓石の色と同じだ。三角錐になっているのは墓石の上か下の角が割れて三角になったのだろう。
「何処で拾ったの!! 」
叱るような母親に里見は遠足のハイキングコースを外れた藪の中で見つけたことを詳しく説明した。
「お墓か何かあったのよ、その石の欠片だわ」
「お化けが僕を連れて行くって…… 」
昨晩の出来事を思い出して泣き出す里見を連れて母親は近くのお寺に駆け込んだ。
拾った石はお寺が供養してくれることになった。
何でもかんでも拾うのではないと住職に説教された後、本堂で経を読む住職の隣で母親と共に里見は正座をさせられて必死に謝った。
それ以降、人影は現われてはいない、母親が墓石だと気付かなければ今頃どうなっていただろう、あの人影に連れて行かれたかもしれない、大学生になった里見は今でも思い出すと震えてくる。
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