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歩いて行ける範囲に3つある溜池のうち一番小さい池に行く事にした。子供たちが蛙池と呼んでいる池だ。池を囲むように葦が生えていて隠れる場所が多いためかウシガエルが沢山居て一日中ウボーウボーと煩いので奥平が物心付いたころから蛙池と呼ばれていた。
「鮒は無理だろうな、バスでも釣るか」
ルアーの入ったタックルボックスとリールの付いた竿を持って奥平は部屋を出て行った。
歩きでも20分程の池に自転車で5分掛からずに到着する。
「懐かしいなぁ」
近くなのに近付くことすらなくなっていた溜池を見回した。
小学生の頃はウシガエルが沢山居た。ウシガエルを捕まえるのは結構難しい、網で掬ったりするよりもルアーなどで釣った方が良く獲れた。ウシガエルは難しいがその子供であるオタマジャクシは簡単に獲れた。
カレーを食べる時に使う大きなスプーンくらいはあるウシガエルのデカいオタマジャクシが網で掬うと面白いほどに獲れたのを覚えている。
鮒も沢山居たしモロコやタナゴにメダカなど多様性のある池だった。だが誰かがブラックバスを放流したらしく中学生になると鮒やモロコなど小魚やウシガエルの数も次第に減ってきて高校生になった頃にはブルーギルとブラックバスしか釣れないつまらない池になっていた。
「あっ、ウシガエルだ。まだ居るんだな、流石蛙池だぜ」
久し振りに来た溜池でウシガエルのウボーウボーという鳴き声を聞いて奥平は懐かしくなる。
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