第四話 猫

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第四話 猫

 転勤の多い会社に勤める香内(こうない)さんが体験した話しだ。  香内は多いときには年に4回も転勤する事がある。  物覚えが早く仕事も出来て独身という事もあって会社からすれば便利な人材だ。諸々の手当が付き給料も良い、おまけに家賃だけでなく電気水道ガスなどの公共料金も会社持ちだ。お金を貯めることが出来ると香内自身も納得している。  このような生活を送っているので引っ越しは手慣れたものだ。  必要最低限の物を持って先に行く、住む部屋は向こうで用意してくれているので残りの持ち物は数箱の段ボール箱に詰めて宅配便で送る。これで引っ越しは完了である。テレビや冷蔵庫などの大きなものは持っていない、全て会社が用意してくれているのだ。個人で持っている電気製品はノートパソコンとゲームマシンくらいである。  4年ほど前、ある地方都市の支社に応援に行ってくれと半年ばかり行く事になった香内はスーツケースに荷物を纏めて早速向かった。 「今までで一番ボロいなぁ」  会社が用意してくれたアパートを見て香内は苦笑いだ。  プレハブ作りの2階建て5部屋が上下で合わせて10部屋のアパートだ。     
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