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「しかも1階だし……まぁ半年の辛抱だ。家賃は会社持ちだしな」
香内の部屋は正面から見て1階の右端だ。真ん中の部屋よりマシだと納得するしかない。
「じゃあ、部屋を拝見しますか」
大きなスーツケースを引き摺って会社から渡された鍵を使って部屋のドアを開けようとしたとき敷地に中年男が入って来た。
「あんたが○○さんところの? 」
会社名を知っているところを見ると不動産屋か大家らしい。
「はい、香内です。よろしくお願いします」
香内がペコッと頭を下げると恰幅のいい中年男が微笑みながら挨拶を返す。
「大家の柴田です。向こうの桜の木がある家に住んでるから困ったことがあれば何でも言ってください」
大家の指差す先に豪邸が建っていた。庭には桜の木の他にも色々植えてある。
「凄い家ですねぇ、流石大家さんだ」
「あはははっ、大したことないですよ、うちは昔からここら辺の地主をしてただけですよ」
大袈裟に驚く香内の前で大家の柴田が楽しそうに笑いながらこたえた。
「いやいや、凄いですよ、先祖から受け継いだ土地を守って立派に暮らしてるんですから」
「あははははっ、まぁ何かあれば何でもいってください」
香内が褒めると大家の柴田は上機嫌になり、その後、少し話をして戻って行った。
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