ジェイクのお仕事

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 やがて森を大分入った所に、一つの泉が見え始めた。水の澄んだ綺麗な泉は、そこそこの深さがある。 「いい?」 「えぇ」  短い返答、強く握られた手。向き合った二人を見てレイバンが焦った。 「なにも良くないっての!」  慌てて出たレイバンは泉の中に数歩入った二人を追って腕を掴む。驚いたカイルの目には追い込まれた狂気があり、リュミの目には追い込まれた絶望が見えていた。 「バカな事しないでよあんた達! どうしてこんな事選べるのさ!」 「離してくれ! 俺達はもう、これ以外の道はないんだ!」 「お願いです、二人でずっと一緒に!」 「バカ!!」  死んで一緒に。そんなバカな事はない。死んだら終わりだ、それはよく知っている。沢山の仲間が死んだんだ。それを見送ったんだ。どんな言葉を掛けても、もう彼らには聞こえなかったんだ。  水の中でもみ合う。足元は倒木などで滑りやすいがそれでもレイバンは何とか二人を陸へと上げようと必死に腕を引いた。  カイルの腕がレイバンを払い除ける。途端、足が滑って深みに落ちていく。リュミが手を伸ばして止めようとして、カイルも深みへと落ちるレイバンを見て慌てたようだった。     
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