誰かの為に作る手料理

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 怪訝そうな顔。続いて酷く驚いた顔をされる。まさか、忘れていたわけじゃないだろうか。 「鼻がいいとは言っていたが、まさか森でキノコを探せるレベルなのか?」 「だよ。審査員の人が犬みたいだって言ってた」 「どうりで…セロリは辛いな」  初めてしっかり理解したような口振りに、レイバンは楽しく笑った。  程なく始まった料理自慢コンテストの決勝戦。ジェイクは鮭の半身を豪快に使った鉄板蒸しを作っている。味付けはシンプル、塩とコショウにチーズ、そして白ワイン。そこに季節の野菜がふんだんに使われた。  ジャガイモ、キノコ各種、ナス、カボチャ、タマネギ、トマト、葉物野菜。それらをざっくりと切って蒸していく。チーズが溶ける香ばしい匂い、野菜から出る旨味を鮭が吸っていく。ふっくらと身も柔らかい。 「美味い!」  思わず声を上げる。皆が鉄板に集まって思い思いに取り分けて食べる。ワイワイとしているのもなんだか楽しい。 「素材がいいんだ、必要以上に手は加えない」  腰に手を当て自信満々のジェイクはとても楽しそうに笑って言った。  夕方、戦利品を持ってドラールの家に戻ると驚かれた。それもそのはず、リアカーにでかい肉の塊が乗っている。料理コンテストの優勝賞品だ。 「こらぁ豪勢だな!」     
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