誰かの為に作る手料理

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 ドラールが喜んでくれるので、よしとする。まさか賞品が牛肉数十キロとは思わなかった。  その日の夕食は豪勢だ。レイバンのキノコは炒め物になり、牛肉は豪快にステーキ、その上にトリュフが乗った。ボルチーニはシンプルなオイルパスタに。白ワインと赤ワインの両方が用意され、デザートは取れたてのブドウだった。  それらをペロリと食べ、少し腹が苦しい。残りの肉はドラールが美味しく食べてくれるらしいので任せる事にした。  夜、膨れすぎた腹を減らすのに散歩に出た。隣にはジェイクがいて、穏やかでのんびりとした時間が過ぎていく。 「夜は流石に少し冷えるね」  上着を着てきたがそれでも肌に感じる空気は冷たい。訪れる冬を感じさせた。 「いい場所だよな、ここ。長閑で、時間がゆっくりすぎている感じがする」  一日がとても長く感じた。騎士団ではあっという間だ。朝起きてご飯を食べて、慌ただしく訓練や仕事に出る。昼に戻ってまた同じく。夕飯を食べて風呂に入って少ししたら眠気が襲う。 「なんか、昔を思い出すよ」 「昔?」  歩きながら、黒い森を見つめる。その手前で、流石に足を止めた。 「俺が天涯孤独だってのは、知ってるでしょ?」 「あぁ」 「騎士団に来る少し前に両親亡くしたんだけどさ、その前は酷い貧乏暮らしだったんだ」     
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