【恋愛騎士物語】４３話 食は幸せを連れてくる（レイバン）

誰かの為に作る手料理

「お前、貴族の血筋だろ？」
「両親がお人好しだったんだよ」

　苦笑して言えば、ジェイクの眉根が寄る。切れ長の瞳が眇められるのを、レイバンは苦笑してみた。

「お人好しで、やり手の祖父が死んだら財産も工場も家もむしり取られて、森の側に建つ掘っ立て小屋で生活してたんだ。森で食材探してさ」
「だから、痩せていたのか？」

　レイバンは頷いた。そういえば、この話をするのは初めてだ。

「秋は良かったよ、栗とかブドウとかもあって、食べられた。鳥もいたからそれも。たまに鹿なんかもいたかな」
「レイバン……」
「でも、この生活に耐えられたのは俺だけ。母親が体を壊して、父親は無理して肉体労働して過労で死んで、母親もその後すぐ。冬になる手前で、食べられなくて騎士団に行ったんだ」

　寒さに凍えた夜も多かった。十月、味覚は豊富でも両親は痩せていった。見たくなくて見ないようにした。あの時、弱々しくも笑った母の影に死神を見たのかもしれない。不自然に顔色が悪く痩せた父の後ろに死神が入るのを見ないようにしていた。

　ふわりと抱き寄せられて、温かな体を感じる。充実した大人の体。寄り添っても倒れる事はない。安らぎを、幸せをくれる場所。