誰かの為に作る手料理

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「ジェイさん、俺は別に不幸じゃないよ。独りぼっちだったけど、今は違う。仲間もいて、何よりジェイさんがいる。だからさ、可哀想じゃないんだよ」 「大事にする」 「もう十分されてる。俺、ジェイさんがいたから乗り越えたんだし」  初めての本格的な戦場。渡されたチェーンを見る度に奮い立った。悲しませない、情けない姿は晒さない。その両方が胸にあった。 「レイバン、俺がここにお前を連れてきたのは、祭りに来るばかりじゃないんだ」 「え?」 「……騎士団を出たら、ここに家を作らないか? 俺と、お前の」 「!」  驚いて、胸にジワリと熱が広がる。嬉しさと一緒に幸せが熱になって染み渡っていく。強く抱きしめて、嬉しいままキスをした。背にゾクゾクと震える程に感じている。 「うん、俺ここ好き」 「まだ先の話だぞ」 「それでもいい!」  そう思えばこの景色はまた違って見えてくる。年老いて、のんびりと過ごす田舎の景色。ここが、第二の故郷になるのかもしれない。  背を撫でる優しい手つきに微笑んで、レイバンは満足に笑う。星の綺麗な田舎の夜、二人は誓い合うようにもう一度キスをした。
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