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「いや、俺は騎士じゃなく、単なる料理番なんだが。ジェイクだ、この度は忙しいのに急な申し出を受けていただき、有り難うございます」
「なんの。こちらも騎士団ほどの大きな取引が出来て光栄ですよ」
リデールという五十代くらいの温厚そうな男はやんわりと言って頭を下げた。
レイバン達がここに立ち寄ったのは、旅行というよりはジェイクの仕事だ。
それというのも近々行われるカール四世の婚礼の際、騎士団でもワインが振る舞われる事となった。そこで出すワインの下調べと発注をジェイクが負ったらしい。
ジェイクは「仕事兼ねてになって悪いな」と言ったが、こんなの仕事のうちにも入らない。一緒に美味しいワインを飲んで選んで発注をかけるだけだ。
しかもこの屋敷の主人リデールの計らいで、今夜はこの屋敷に泊まる事が決まっている。
リデールの案内で屋敷の中へと招かれたレイバン達は、ツインの一室へと案内された。流石にダブルではないが、二人一室がいいと言えば受け入れられた。しかもベッドは大きい。
「立派な屋敷だね」
「それについては先祖に感謝ですね。わしの先祖はここら一帯の領主でしてね、ワイン作りを生業としておりました」
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