ジェイクのお仕事

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 レイバンの声に驚いたらしい娘が先に走り出し、男もそれとは違う方向へと走っていく。その背中を見たリデールは、悲しそうな目をした。 「孫娘のリュミと、ここで働いている農夫の息子です」 「恋人だよね?」 「そう、上手く行かなくて困っているのですよ」  穏やかなリデールのただならない様子に、レイバンとジェイクは顔を見合わせてしまう。何か、とても困ったもののように思えたのだ。 「どういうことだ?」 「当人達は想い合っているのですがねぇ。あれの父親同士がどうにも上手く行かないで、反対しているのです。どちらも片親、捨てられなくて」  親のないレイバンにしたら、おそらく一生分からない問題。ジェイクももう親がどうのという年齢ではない。以前水を向けてみたら「勝手にしていいらしい」と簡単に返ってきた。 「リュミの父親と、相手のカイルの父親は同い年で、同じワインの仕込みの仕事をしておりましてな。どちらも腕がいいものだから比べられて。そして性格も似ているのか、互いにライバル心が強く次第にいがみ合う様になって」 「辛い事ですね」 「でも、それで子供が不幸っておかしくない?」 「わしはいいと思うのですよ。リュミは気立ての良い子ですし、カイルは働き者で明るく真面目で。年もリュミが二つ程上の姐さんですからね。このような仕事では女が年上の方が安定するものです」     
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