ジェイクのお仕事

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 十月の泉は身を切るように冷たい。足がつかない事に一瞬パニックになった。それでも着衣水泳は騎士団でもやっている。透明な空へと向かい、手を掻いていく。寒さに体が縮こまって動かなくても、進みがほんの少しでも構わない。  手を一杯に伸ばした。その手を、取った誰かがいた。少しゴツい、節のある手。その手がレイバンをしっかり掴まえ、引っ張りあげた。 「レイバン!!」 「あ……」  僅かに水に体を濡らすジェイクがレイバンを抱き上げて陸へと連れて行き、毛布で包み込んでいく。見ればリデールの他に、見知らぬ農夫が二人いる。  そしてカイルとリュミの二人が青い顔をしていた。 「早く風呂へ! これから冷え込むから、風邪でも引いちゃいけない」  リデールに言われ、ジェイクが抱き上げる。「自分で」と言ってみるが、ガタガタと体が震えて言うことをきかない。ジェイクは強く抱き寄せて首を横に振った。 「大丈夫だ」  その言葉だけで安堵する。体の震えは止められなかったけれど、もう大丈夫という安心感は深くて、レイバンはいつの間にか眠ってしまった。
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