二巻 空ノ青01

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 僕の双子の兄である海晴(カイセイ)と、僕たちが連れてきた歌乃(カノ)という少女に、 「それじゃあ」  と手を振って別れた後、まっすぐに部屋に戻った。  自室の扉を前に、横目でちらりと二人を振り返ると、歌乃だけがこちらをじっと見ていた。  その視線には気付かない振りをして部屋の中へと急いだ。  どきりとした。  早鐘を打つ心臓を、服の上から押さえつけるように胸を鷲掴む。  何故、歌乃は僕を見ていたのだろう。  どうして・・・どこか僕は、不自然だっただろうか。  彼女の視線は苦手だった。  とても静かで、弱々しいくせにゆるぎない瞳。  黒く、昏く、深い夜の海を思わせるような瞳。  鏡のような瞳に心の中を見透かされてしまうような気がして、すこしだけ怖くなる。  僕の不安も恐れも、醜ささえも突きつけられるようで、吸い込まれそうなあの眼を合わせることを躊躇(ためら)う。  なのに、惹かれていた。  とても暖かな瞳。まるで包み込まれるような温かさ。  優しい色、不思議な輝き。  彼女の瞳は、どこか安心する。まるで、亡き母のような。  だからつい、目で追ってしまう。  気付かれないように、そっと。  無駄だとわかっているのに。     
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