二巻 空ノ青01

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 呼吸を整えて小さく息を吐いてから、部屋の中を見回した。  一人で過ごすには広すぎる部屋に、ひやりと風が流れる。  普段はなんとも思わないけれど、時々、この広さは残酷に孤独を思い知らせるようだ。  心底ついた溜め息も良く響き渡って、部屋中に充満すると、自身に返って来て侘しさが浸透する。  窓際に配された、青灰色で統一されたベッドに腰を下ろして身を任せる。  そのまましばらくぼぅっとしていた。  ちゃんと考えなきゃいけないのに、考え事がまとまらない。  思考が散乱して、何を考えるべきなのかすら分からなくなっていった。  天井を眺めながら、呼気が小さく一定のリズムを刻み始め、その微かな音に心音が重なってゆくのを感じた。心地よく、しばらくはそのままに身を任せ、やがて目蓋を下ろした。  コツ、コツ。  扉が遠慮がちに叩かれる音に、はっとして目を開いた。  暗く落ちていた視界に、突然飛び込んできた橙の陽光が刺さって目を細める。  コツ、コツ。  もう一度、扉が遠慮がちに叩かれた。気のせいではなくはっきりと響いたその音に、自分が転寝をしていたことに気付く。  いったいどのくらいの時間を、微睡(まどろ)んでいたのだろう。  コツ。  今度はもっと小さく、扉が叩かれる。     
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