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コンビニ彼女
「何か、ご入用はありませんか?」
麿さんが、いつものように会計を終えた俺に尋ねてくれる。
「大丈夫です。ありがとうございます」
俺も、いつものように答えを返す。このやりとりも、もうあと僅かでできなくなるのかと思うと、ちょっと、いやだいぶ寂しくなる。
「えぇぇ? マジぃ? ここ潰れちゃうワケぇ? 聞いてねぇよぉぉ」
無駄に語尾を伸ばしたしゃべり方が気に障り振りかえると、最近この時間にたまに見かける、俺と同じく仕事帰りと思われる茶髪のスーツ姿の男がいた。どうやら麿さんのいるレジの後ろの壁に貼ってある、「誠に勝手ながら店主高齢の為、今月いっぱいで当店は閉店させていただきます」の張り紙を見つけたようだ。やけに喧嘩腰の態度で、麿さんに絡んでくる。聞いてない、じゃないだろ。張り紙はレジと店の入口に、ずいぶん前から貼られていたはずだ。
「はい。ご不便掛けて申し訳ありませんねぇ」
「ちょ、マジありえないんだけどぉぉ。めっちゃ不便。なんとかなんないのぉぉ」
たわけ、この新参者が。お前ごときが麿さんの店に文句をつけるなんぞ百年早いわ。
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