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無言の圧力をこめて、語尾伸ばし野郎に視線をぶつける。俺は図体だけは立派なので、男はビビったのか、栄養ドリンク一本の会計を済ますと、それ以上は文句を口にせずすごすごと店を出て行った。
「お買い上げありがとうございました。月末まで、よろしくお願いしますねぇ」
こんな失礼な客でも、麿さんはふんわりと笑顔で見送る。実に「雅」だ。
ここ「55(ゴーゴー)ストア」は、あと数日で店を閉じる。経営者である麿さんご夫婦が、高齢を理由に引退を決意されたのだ。以前は酒屋だった店を、コンビニ形態の店舗に替えて二十余年。店名の「55」は、「中麿酒店」がコンビニとして生まれ変わった時の、麿さんの年齢から取ったものだと聞いていた。学生の頃から始まって就職してからも、かれこれ七年近く、この店のお世話になっていた俺としては、「55ストア」閉店のニュースは非常に感慨深かった。
大学入学を機に田舎から出てきた俺は、この街で初めてのひとり暮らしを始めた。アパートの近くにあったのが、この「55ストア」だった。とにかく金のない貧乏学生だった俺は、当初電化製品がほとんどない暮らしをしていたので、「55ストア」を自分の冷蔵庫代わりのように使っていた。
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