コンビニ彼女

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「はー、なるほど。えーと、大丈夫です。ちゃんと欲しい物買えました。ありがとうございます」 「そうですか。何かご要望があったら、ぜひ遠慮なくお伝え下さいね。一応『コンビニエンスストア』ですからね、お客様のご都合にあった品ぞろえを、心がけなきゃいけませんからね」  そんな風に言ってくれた麿さんは、その後も買い物のたびに「何か、ご入用(いりよう)はありませんか?」と聞いてくれた。 「花粉症がひどいんで、ウェットタイプのティッシュがあると嬉しいです」 「このカップ麺、ビッグサイズがあるらしいんで食べてみたいです」 「マネーカードって、取扱いできますか?」  長年通ううちに、俺は厚かましくも、アレコレと麿さんにリクエストをさせてもらうようになった。その度に麿さんはニコニコと「ハイハイ。了解いたしました」と嫌な顔ひとつせずに応えてくれた。思えば、麿さんご夫婦にはずいぶんと甘えさせてもらってきた。店を閉めてしまわれるのは寂しいけれど、ご夫婦健康なうちに、今後はのんびりと旅行や趣味を楽しんだりしてくれれば、俺としても非情に嬉しい。  店を出ようとした俺と入れ替わりに 「いらっしゃいませ」  55ストアの自動ドアが開いて、そこにいた人影に僕はハッと息を呑んだ。 「こんばんは」     
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