コンビニ彼女

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 麿さんに挨拶するこの女性客こそ、俺が密かに恋をしている「ピーチ姫」である。  ピーチ姫との出会いはかれこれ三年前になる。55ストアで何度か見かけた彼女は、いつも何かしら「桃」系の商品を購入していた。桃のジュース、桃のアイス、桃のヨーグルト、桃の缶詰。桃の名産地である山梨県出身の俺としては、その点だけでも好感が持てたのだけれど、いつもTシャツとスウエットに鮮やかな色のスニーカーという実にシンプルな出で立ちなのに(驚く事に真冬でも)、店内を歩いたり商品を手に取ったりする所作がとてもきれいで女性らしくて、そのギャップにも惹かれていた。  どこに住んでいるのだろう? 仕事は何をしているのだろう? 名前はなんていうのだろう?  気になる事はやまほどあったけれど、所詮コンビニですれ違うだけの間柄の俺が、いきなり声をかけるのはどうかと、なんのアクションも起こせないまま、三年という月日が過ぎてしまっていた。 「どーも」 「あ、どーも」     
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