平成最後の花火

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平成最後の花火

月に一度の約束の前日、メッセージを送信すると父からすぐに返信があった。 行きたい店があるなら調べておきなさい、一緒にまわろう。 父からのメッセージを既読にしたまま、スマホに充電ケーブルを繋いで眠った。 ダメもとでただひろを花火大会に誘ったらあっさりOKをもらった。 それで慌てて押し入れの奥から引っ張り出した浴衣を羽織ったら、丈が短くて焦った。去年は花火大会には行かなかった。友達に誘われたりもしたけど、気分じゃなかったのだ。おととしは着られた浴衣が今年はもう小さくなっていた。 それで父に「浴衣がほしい」とメッセージを送った。わがままを言うのも親孝行だって友達が言ってた。こんなのわがままのうちに入るかどうかはわからないけど。 待ち合わせに遅れていくと、父がドトールで待っていた。 タバコくさい息。 誰かに見られたら、援助交際と思われるかもしれない。こんなきたないおじさんと。 「何か飲むか」 「いらない」 「じゃあ行くか。浴衣買いに」 うん、と頷くと父はまだ中身が入っているアイスコーヒーが乗ったトレイを返却口へ運ぶ。 人で溢れた暑い交差点を渡る。前を歩く父が時々振り返りわたしとの距離を詰めようとする。     
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