平成最後の花火

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それから髪につける飾りと、カゴの巾着と、草履を買ってもらう。全部でいくらかは計算してない。「ありがとう」はその都度ちゃんと言った。 レストランでケーキセットを食べ、外に出てからアイスを買ってもらい、食べながら歩いた。 「バイバイ、お父さん」 父は笑わない。 暑い。 もう、何にも考えたくないくらい暑い。 浴衣は重いけど、手に入れたことが嬉しくて紙袋の重さは気にならない。 「いつまで会わなきゃならないの」 家に帰ると母が麦茶のパックを沸いたやかんに入れるところだった。 「成人するまで」 首に巻いたタオルで汗を拭きながら母は答え、紙袋を見る。 「約束したのよ。お父さんはきちんと約束を守っているんだから」 クーラーのリモコンで設定温度を下げる。一度下げるたびに『ピ』と可愛い音がする。 「なんの? 誰のための約束? 会うのはわたしなのに、わたしが嫌だって言ってるのに……」 リモコンを投げつけるようにテーブルに置く。 「浴衣買ってもらったんでしょ! 都合のいいように利用しといてよく言う」 「は? ムカつく」 なんで中身知ってるの。わたしの知らないところで交わされた父と母のメッセージ。 世界は狭い。狭すぎて窮屈。 トラップみたいに見えない線でどいつもこいつも繋がってる。 早く大人をはじめたい。 待ち合わせに30分も早くついてしまって、どこにも涼む場所がない。     
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