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「あぁ、勿論ユーリも頑張ってくれた。だが君の魔法がなければ誰1人として、救えなかったのも事実だ……私はあの時何もかもを諦めて、絶望していた。だからこそ藁にもすがる思いで、悪魔に手を出したんだ。君は私の間違いを正してくれた。ユーリも……いつも私の後ろに隠れているだけの子供だったのに、いつのまにか私の方が守られていた……私は他の人に助けを求めるべきだったんだ……悪魔なんかに手を出す前にね。私が勝手に無理だと決めつけて、選択肢を狭めていた。あの時、君達を見ていて教えられたよ」
トーリはそう言うと優しく微笑んだ。
「……そうですね」
俺もユーリがあの時、トーリの前に飛び込んだのは驚いた。
ユーリは年齢通りの幼い性格で、俺やトーリの後ろについていくだけだったのに。
「……そういえば、クレイシスの固有魔法ってすごい可愛い感じなんですね?」
俺はあの殺伐とした状況の中に漂う、ファンシーなぬいぐるみの姿を思い出した。
「いや……それは少し違うよ。我が一族に伝わる固有魔法は、召喚した幻獣を媒介にした奇跡の回復魔法だ。だがその姿は、術者本人の精神に依存する。だからあの姿はユーリの心の在り方といっていい」
トーリは俺にそう教えてくれた。
「だからですか。納得です」
あのぬいぐるみの姿は、ユーリの心が幼いからなのか。
なら将来的には、前世本で見たような神々しい姿で召喚されるのかな?
少し楽しみだ。
きっとこれからユーリは、もっと強くなる。
守られる立場から守る立場に変わるだろう。
それはほんの少し寂しいけれど、ユーリの成長は素直に嬉しい。
俺にとってユーリは、友人でもあるけれど弟のような存在でもあるから。
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