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「……陛下や他の司教達は私を指名したよ」
苦々しい顔をして言った。
トーリは未遂に終わったが、自分の犯した罪は分かっている。
悪魔の件は公にされていない。
それでも、罪を犯した自分が教皇職につく事が納得出来ないのだろう。
「僕もそれには賛成ですね。教皇には貴方が最も相応しい」
でもだからこそ、トーリが相応しいと俺は思う。
1度過ちを犯したからこそ、もう2度と間違うことはない。
それに彼は民を何より思っているから、いい主導者になれる。
「ぼく…も、…おもぅ!」
ユーリも俺と同意見のようだ。
何度も首を上下に振り、肯定している。
「しかし……」
「貴方がそれを罪に感じるなら、これからの行動で償えばいいので? もうこのようなことが2度と起きないように、貴方が教会を導けばいい」
トーリがまだ渋い表情を浮かべたので、俺はもう一押しした。
俺としても今後あのような豚を世に送り出さないという意味でも、トーリに引き受けて貰いたい。
「……そうですね、教会は民の信仰の要だ。清廉潔白でなければならない。……決めました。このお話受けようと思います」
「はい、トーリさんなら出来ると思います!」
「ん!」
トーリは教皇職につく決心をしたようだ。
これからは教会に溜まった膿も一掃される。
もうこのような事は2度と起こらない。
貴族や金を持ったものが優先されがちだった回復魔法の治療も、真に民を思うトーリの采配で誰にでも平等に行き渡るようになる筈だ。
俺は穏やかな未来に想いを馳せた。
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