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「ではリュート様は私が見ていますので、奥方様はそれまで体を休めていて下さい。レイアス様もそろそろ家庭教師の先生が来る時間ですので本邸の方へお戻り下さい」
「じゃぁ、セルバさんリュー君の事お願いします」
「宜しくお願いします」
母様は屋敷にいたメイドに連れられ廊下を奥へ向かっていった。
俺もセルバさんに厨房まで案内して貰おうとした。
「…………………………………………兄様、手を離してください」
が、兄様が俺の手を離す気配がない。
「ごほんっ、レイアス様家庭教師の先生がそろそろいらっしゃいます」
「嫌だ。……まだ此処にいたい」
セルバさんが再度促すも、兄様は拒否した。
「レイアス様……」
「たまにはいいじゃないか。……僕だってたまには遊びたい」
確かにまだ9歳の子供が勉強漬けも可哀想だな。
余り我が儘とか言わなそうなタイプだし……さっきはあれだったが。
もしかしたら、普段抑圧されてるからこそおかしくなったのかもしれない。
……(今後の為にも)少し位、息抜き出来ないのかな?
「はぁ……先生の方には私からレイアス様が体調を崩されたと連絡しておきます。今日だけですよ?」
セルバさんも俺と同じ風に思ったのか取りなしてくれるようだ。
「ありがとうセルバッ!」
兄様はすごく嬉しそうだ。
先程のやり取りで変態のイメージがついてしまったが流石はメイン攻略キャラの1人。
笑顔が眩しい。
やはり、さっきのは疲れから来る異常だったのだ。
「じゃあ行こう僕の天使!! 案内するよっ!」
兄様が俺の手を引きかけていく。
兄様はまだまだお疲れのようだ。
変な妄想に囚われている。
「兄様、僕は天使じゃありませんよっ!」
というか、そもそもお前のではない。
強いて言うなら、母様のだ。
「ははっ、天使だよ。リューは僕の天使だ!」
だからお前のじゃないってば。
……もういいや、スルーで。
「こっちだよリュー」
「……はいはい」
俺は引っ張られるがままついていく。
何事も諦めが大事である。
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